Classici giapponesi con furigana
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しゅんかん
俊寛
菊池 寛
Leggi 俊寛 (しゅんかん) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.455 caratteri · 35 schermate
彼は、時々自分の顔を、水鏡で映して見る。が、その変りはてた姿を、あさましいなどと思ったことはない。むろん現在の彼には、妻子が時々思い出されるだけで、清盛のことなどは、念頭になかった。平家が、千里のかなたで奢っていようがいまいが、そんなことは、どちらでもよかった。それよりも彼は、自分が植えつけた麦が成長するのが、一日千秋の思いで待たれた。
麦の畑に生うる雑草を取ることは、彼の半日の仕事として、十分だった。が、午後からは海岸へ出て、毎日のように鰤を釣った。糸は太い蔓を用い、針は獣の骨で作った。三、四尺の大魚は、針を入れると同時に、無造作に食いつく。それを引き上げるのが、どんなに壮快であっただろう。それは、魚と人間との格闘であった。俊寛は危うく海の中へ、引きずり込まれそうになる。それを、岩角へ足をふんばって、ぐっと持ち堪える。魚はそのかかった針をはずそうとして、波間で白い腹をかえしながら身を悶える。そうした格闘が、半刻近くも続く。そのうちに、魚の力が弱ってくる。それでもなお、身体を激しく捻じ曲げながら、水面に引き上げられる。
この豪快な鰤約が、この頃の俊寛にとっては、仕事でもあり、娯楽でもあった。