Classici giapponesi con furigana
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いりえのほとり
入江のほとり
正宗 白鳥
Leggi 入江のほとり (いりえのほとり) di 正宗 白鳥 (まさむねはくちょう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 25.430 caratteri · 50 schermate
とても生きていられないと、神経を昂らせながら、英語読本を披いた。
が、辞典を片手に精いっぱい研究していながら、心はややもすると書物から離れて、ほかの思いに疲れた。深夜も白昼のような東京で、落第した自分がモルヒネか何かの毒薬を飲んで自殺する悲しいありさまを空に描いたり、西洋の婦人と自在に会話を取かわしている得意なありさまに胸を轟かせたりしていたずらに時を過した。運動不足のために、柔かい食物も消化が悪くて、勉強に取りかかると、腹の重苦しいのがいっそう気になった。
辰さんのように一心不乱に勉強するつもりで、炬燵を離れて兄のテーブルに向ったが、裾の方が寒くて、手の先も冷えて、とても長い辛抱はできなかった。で、ふたたび炬燵の側へ戻って、額を櫓の縁に押当てて、取りとめのない空想に耽りだした。好きな蜜柑を母親が籠に入れて持ってきてくれると、胃に悪いと知りつつ手をつけて二つ三つ甘い汁を啜った。
辰男は極った時刻に学校から帰って、テーブルの位置も書物の配置も乱されていないのに安心した。衣服を着替えて椅子に腰を掛けると、昨夕ヴァヰオリンの音を恋しがったことを思いだして、壁の方へ目を向けたが、感興はいつの間にか消えていて、そんな物を手に執るのさえ懶かった。