Classici giapponesi con furigana
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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
Leggi 凡人伝 (ぼんじんでん) di 佐々木 邦 (ささきくに) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 98.944 caratteri · 202 schermate
「僕はこの春明治学園の側を通った。余っ程寄って見ようかと思ったけれど」
「寄ってくれゝば宜かったです」
「この服装だからね」
「構いませんよ」
「連中から便りがあるかい?」
「小松さんから時々手紙が来ます。北村さんは早稲田にいます」
「北村君には会ったよ」
「いつ?」
「ついこの間。矢っ張り号外を売りに出た時」
「僕はこの正月郷里で会ったきりです。あなたの住所を知らなかったですよ」
「誰にも教えない」
「何故ですか?」
「然ういう約束だもの。君も訊かないでくれ給え」
「仕方ないです。しかし今何をしているか、それぐらい話しても宜いでしょう」
「この通りさ。新聞配達をやっている」
「学校へは行かないんですか?」
「夜学へ通っている」
「何の?」
「法律学校さ」
「何処の?」
「それを言えば分ってしまうよ」
「分っても宜いじゃないですか?」
「いけない」
「相変らず頑固だな」
と私は諦めた。
「しかし河原君、僕はこれでも安心立命を得ているよ。この点、君にお礼を言わなければならない」
「何ですか?」
「君の蒔いた種が生えた」
「はゝあ」
「僕は神さまが見えかけて来た」
「教会へ出るんですか?」
「うむ。聖書も読んでいる」