Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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クルスかんのん

十字架観音

野村 胡堂

Leggi 十字架観音 (クルスかんのん) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.655 caratteri · 27 schermate

Aozora Bunko

剣もほろろです。

「お言葉だが――」

余吾之介は一歩進みました。と、何処からともなく飛びついて来た一人の女、

「余吾之介様」懐へ飛込むように、顔を見上げるのでした。

「お、鹿の子、無事であったか」

「余吾之介様、お秋が代って死にました、私も処刑を願いましたが許されません、何事も思召でございます」

「鹿の子」

二人は犇と、四方の見る目も構わず抱き合いました。後には消え残る焔、その上にそそり立つ五十の殉教者達の死体は、

活きよ、活きて教義の為に尽せよ――

と言っているようです。

間もなく島原の乱が起り、日本の切支丹は根を絶ち、枝も葉も枯らされましたが、それでも江戸三百年の峻烈無比な禁制を潜って一脈の教義は伝えられました。

十字架を持った観音像を背負って、九州から松前まで、四十年の間巡礼に暮した夫婦者、――余吾とお鹿というのが、その江戸切支丹の源泉でもあり、守護者でもあったのでした。