Classici giapponesi con furigana
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はんしちとりものちょう
半七捕物帳
岡本 綺堂
Leggi 半七捕物帳 (はんしちとりものちょう) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7788 caratteri · 15 schermate
中間は或る屋敷のくぐり門から喜右衛門を案内してはいった。屋敷のなかも薄暗いのでよくは判らなかったが、内玄関のあたりは随分荒れているらしかった。中の口の次に八畳の座敷がある。喜右衛門をここに控えさせて、中間はどこへか立ち去った。
座敷には暗い灯が一つともっている。その光りであたりを見まわすと、もう手入れ前の古屋敷とみえて、天井や畳の上にも雨漏りの痕がところどころ黴びていて、襖や障子もよほど破れているのが眼についた。昼間来た主人の侍のすがたとは打って変って、勝手都合の頗るよくないらしい屋敷のありさまに、喜右衛門は少し顔をしかめた。このあばら家の体たらくでは、あと金の十四両をとどこおりなく払い渡してくれればいいがと、一種の不安を感じながら控えていると、奥からは容易に人の出てくる気配もなかった。雨はしとしとと降りつづけて、暗い庭さきでは虫の声がさびしくきこえた。喜右衛門はだんだんに待ちくたびれて、それとなく催促するように、わざとらしい咳を一つすると、それを合図のように縁側に小さい足音がひびいて、明けたてのきしむ障子をあけて来る音があった。
それは十三四歳の茶坊主で、待たせてある喜右衛門に茶でも運んで来たのかと思うと、かれは一向に見向きもしないで、床の間にかけてある紙表具の山水の掛物に手をかけた。