Classici giapponesi con furigana
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なんぽうものがたり
南方物語
小川 未明
Leggi 南方物語 (なんぽうものがたり) di 小川 未明 (おがわみめい) in giapponese con furigana. JLPT N3. Tocca una parola per il significato.
N3 · intermedio · kanji e kana moderni · 5065 caratteri · 11 schermate
そして、その中の、ただ一そうの船は、遠く遠く沖の方へ吹き流されてしまったのです。
暴風がやんだときに、この一そうの船は、まったくひろびろとした海の上に、あてもなく、ただよっていました。どちらが北であり、どちらが南であるかさえわからなかった。
この船に乗っている三人のものは、たがいに顔を見合って、ため息をつきました。生も、死も、運命にまかせるよりほかに、みちがなかったからです。
ふしぎに船は、くつがえりもせず、波にゆられて風のまにまに、すでに幾日となく海の上をただよっていました。三人は、つねに、こうしたときの用意にしまっておいたかつお節や、こんぶなどをとり出して、わずかに飢えをしのいだのでした。
今日は、船に出あわないか、明日になったら、どこかの浜に着かないかと、空しい望みを抱いて、ただ、海から上った太陽をながめ、やがて、赤く沈んでゆく太陽を見送ったのです。
「どうかして、すくわれたいものだな。」
ひとたびは、死を覚悟したものが、こうして毎日、おだやかな海を見るうちに、どうかして生きたいという希望に燃えたのでした。
のろわしい風も、いまは、やさしく彼らの耳にささやき、ほおを吹いたのであります。