Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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なんぶのはなまがり

南部の鼻曲り

久生 十蘭

Leggi 南部の鼻曲り (なんぶのはなまがり) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.683 caratteri · 25 schermate

Aozora Bunko

五

というと、モオリーは眼を伏せたまま返事をしない。おれはイライラしてきて、

「おい、どうしたんだ」

というと、モオリーは、

「私にはあなたを足蹴するだけの勇気はありません」

とつまらないことをいいだした。おれは腹をたてて、

「くだらないことをいうな。まごまごしているとおれまで死んでしまう、早くしろ」

と怒鳴りつけた。なにかもぞもぞしたものがおれの脇腹のあたりをくすぐりだした。なんだと思ったら、おれの手をさがしているモオリーの手だった。

五

東京の市中をジープが走りはじめると、おれはまたモオリーのことを思いだした。

それはどうしたって思いださぬわけはないのである。モオリーのむずかしい加減の悩みは、要するに日本というものをあまり気にしすぎたためだったのだが、オオミヤクの泥沼で思い切っておれを足蹴した瞬間、はじめて日本の幽霊からぬけだすことができたのだとおれは信じている。そうしてみれば、あの真実なモオリーのことだから、アメリカ人としても類のないいいアメリカ人になってくれたに相違ない。

おれが猛烈にモオリーのことを思いだしたのは、けっしてこんどがはじめてではない。