Classici giapponesi con furigana
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ねむのきのかげ
合歓木の蔭
山本 周五郎
Leggi 合歓木の蔭 (ねむのきのかげ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.740 caratteri · 27 schermate
それは乞食のように哀れな身の上であったり、王姫のように耀かしい生活であったりするが、どっちにしてもそういう空想のほうが現実よりなまなましく、実感がこもっているように思えたのはふしぎである。岩田半三郎と婚約ができ、祝言の日どりが定ってからも、ふとすると誰かが遠くから自分を呼んでいるような錯覚におそわれる。
――さあ早くおいで、なにを迷っているんだ、早く来ないと取り返しのつかないことになるよ。その声はこういう風に呼ぶ。早く早くさあ、そのまま出て来ればいいんだよ。
奈尾は今じっと反省してみる、自分のこういう性分は本当にあぶないことかも知れない、婚約者があるのに、袂へ入れられた見も知らない人の文を隠れて読むなんて、普通の娘ならこんなことはしないであろう、すぐに親へ告げるか、読まずに裂いて捨ててしまうに違いない、――奈尾は持っていた文を裂こうとした。けれどもそれより強い感情がそうさせなかった。ためらっているうちに足音がして、「奈尾さま」と、ばあやの呼ぶのが聞こえた。
「はい、ばあや、ここよ」
彼女はそう答えながら、手文庫の中へその文をしまった。「旦那さまのお帰りでございます」