Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

Leggi 名人地獄 (めいじんじごく) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.286 caratteri · 301 schermate

Aozora Bunko

いまだに不思議でなりません。これは冗談にではございますが、よく私は兄に向かって、こういったものでございます。『兄貴はきっとおれの声まで、攫って行ったに違えねえ。だからそんなにうめえのだ』とね。で、私はその時にも、これは兄貴めがおれの声を、返してくれたに相違ねえと、こう思ったものでございますよ」

「それはあるいはそうかも知れない」若い侍はまじまじと、かこの顔を見守ったが、「いつ頃お前は追分を出たな?」

「今年の夏でございます」

「その後一度も帰ったことはないか?」

初めて知った甚三の死

「はい一度もございません」

「……だから何んにも知らないのだ。……悪いことはいわぬ一度帰れ。それも至急帰るがいい」

「はい、有難う存じます。実は私は思いたって、故郷を出て海へ来たからには、海で一旗上げるまでは、追分の土は踏むまいと、心をきめておりましたが、そんな事があって以来、兄のことが気にかかり、どうも心が落ち着きませんので、この頃一度帰ってみようかと、思っていたところでございますよ」「それは至急に帰るがいい。……恐らくお前の驚くようなことが、持ち上がっているに相違ない」