Classici giapponesi con furigana
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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
Leggi 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 75.586 caratteri · 159 schermate
僕はとても駄目なんです。」
中川堤に添う真暗な溝川の岸を歩いて行きながら、増田は突然千代子の方に寄添い、初めて見た時から千代子さんが好きで好きでたまらなかった事を打明けた。しかしその時分には山室さんが頻にモーションを掛けている最中だったから、自分なんかが何か言っても駄目だと思って我慢をしていたが、山室さんは現在の興行がすむと、X座の女歌手糸子さんと一座になって関西へ行く話がきまった事を、確な処から聞知ったので、もう我慢してはいられなくなったと言うのである。
千代子は歩いて行く中、人通りのない真暗な夜ではあるが、一歩一歩自分の家が近くなるので、まさかの場合には声を出して逃げ出せばいいと、いくらか度胸をきめて、言いたいだけ男に口をきかせていた。男の声は顫えてとぎれとぎれになった時、いつか家の前まで来た。店口の閉めた雨戸の隙間から灯の漏れるのが見える。千代子は安心して立止り、
「じゃ、左様なら。」とやさしく手を出して握らせる。
「千代子さん。僕のお願いきいて下さい。僕、今夜はおとなしく帰りますから。」
「あら、とうとう降って来たわ。」
「そんな事かまいません。