Classici giapponesi con furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Leggi 夜の靴 (よるのくつ) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 107.056 caratteri · 213 schermate
雨過山房の午後――鎌研ぐ姿、その蓑からたれた雨の雫。縄なう機械の踏み動く音、庭石の苔の間を流れる雨の細流。空が徐徐に霽れるに随い、竹林の雫の中から蝉の声が聞えて来る。群り飛びまう蝿の渦巻――
この二十八戸の村から十七人出征している。そのうち二人だけが帰って来た。先日、湯の浜へ行ったときのことだが、汽車から降りて来て、今しも故郷へ入って行こうとしている復員の兵士が二人、電車の昇降口で話していた。どちらも勇敢そうな、逞しい身体で、見ていても気持ちの良くなる青年である。
「あーあ、半年おれは、ぐっすり寝たいな。」と一人が、電車の継目の欄干にもたれ、顔に真正面からかッと日を浴びて云った。
「弾の下くぐることなら、あんなことは平気だが、眠いのはのう。」と背の高い美男子の一人が云った。
そこへその兵士の故郷の知人らしい老人が乗って来た。顔が合うと、美男の兵の方が、
「敗残兵が帰って来たア。」
と、いきなり云って笑った。老人は、「わッはッはッ。」と笑ってから、肩を一つぽんと叩いた。それでおしまいだった。日本人らしい笑いだ。
電車が稲の花の中を走り出し、次ぎの停留所まで来たとき、またその兵士の知人らしい、美しい若い婦人が、小さな子供をつれて乗り込んで来た。