Classici giapponesi con furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Leggi 夜明け前 (よあけまえ) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 205.629 caratteri · 408 schermate
「お父さん、あなたの退役願いはまだおきき届けにならないそうですね。」
「そうさ。退役きき届けがたしさ。」
寿平次は吉左衛門のことを「お父さん」と呼んでいる。その日の夕飯後のことで、一緒に食事した半蔵はちょっと会所の方へ行って来ると言って、父のそばにいなかった時だ。
「寿平次さん、」と吉左衛門は笑いながら言った。「吾家へはその事でわざわざ公役が見えましてね、金兵衛さんと私を前に置いて、いろいろお話がありました。二人とも、せめてもう二、三年は勤めて、役を精出せ、そう言われて、願書をお下げになりました。金兵衛さんなぞは、ありがたく畏れ奉って、引き下がって来たなんて、あとでその話が出ましたっけ。」
そこは味噌納屋の二階だ。大火以来、吉左衛門夫婦が孫を連れて仮住居しているところだ。寿平次はその遠慮から、夕飯の馳走になった礼を述べ、同じ焼け出された仲間でも上の伏見屋というもののある金兵衛の仮宅の方へ行って泊めてもらおうとした。
「どうもまだわたしも、お年貢の納め時が来ないと見えますよ。」
と言いながら、吉左衛門は梯子段の下まで寿平次を送りに降りた。夕方の空に光を放つ星のすがたを見つけて、それを何かの暗示に結びつけるように、寿平次にさして見せた。