Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

Leggi 夜明け前 (よあけまえ) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 205.629 caratteri · 408 schermate

Aozora Bunko

「お民、おいで。髪でも直しましょう。」

おまんは奥の坪庭に向いた小座敷のところへお民を呼んだ。妻籠の本陣から来た娘を自分の嫁として、「お民、お民」と名を呼んで見ることもおまんにはめずらしかった。おとなの世界をのぞいて見たばかりのようなお民は、いくらか羞を含みながら、十七の初島田の祝いのおりに妻籠の知人から贈られたという櫛箱なぞをそこへ取り出して来ておまんに見せた。

「どれ。」

おまんは襷掛けになって、お民を古風な鏡台に向かわせ、人形でも扱うようにその髪をといてやった。まだ若々しく、娘らしい髪の感覚は、おまんの手にあまるほどあった。

「まあ、長い髪の毛だこと。そう言えば、わたしも覚えがあるが、これで眉でも剃り落とす日が来てごらん――あの里帰りというものは妙に昔の恋しくなるものですよ。もう娘の時分ともお別れですねえ。女はだれでもそうしたものですからねえ。」

おまんはいろいろに言って見せて、左の手に油じみた髪の根元を堅く握り、右手に木曾名物のお六櫛というやつを執った。額から鬢の辺へかけて、梳き手の力がはいるたびに、お民は目を細くして、これから長く姑として仕えなければならない人のするままに任せていた。