Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Leggi 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 285.635 caratteri · 558 schermate
「だあれ!」
暗い中で、狼狽しきった声は女でありました。兵馬はそれに答えないで、自分の手にある小提灯をつきつけて見ると、女が一人、枕屏風の蔭にふとんから起きかかっている。そのほかには誰もいないようです。
「だあれ!」
と女はおどおどしながらとがめたけれど、存外、度胸があるのか、この不意の侵入者に対しても、世の常の女が騒ぐほど、騒いではいないらしいのが不思議です。
「あなた一人ですか」
と兵馬が言いますと、
「ええ、一人よ。なんだって、断わりなしにはいって来たの?」
やはり女は悪びれずに、かえってこちらをとがめるだけの余裕さえあるのを、兵馬は案外の思いをしていると、
「あら、あなたは、あの浅間のあのお客様じゃなくって、まあ、この間は失礼致しました」
「おお、お前は、あの人か」
その時の闖入者は、ここでは地をかえてしまいました。
闖入して来たのは宇津木兵馬であるが、その闖入に驚かされた人は、身なりこそ変っているが、あの手古舞の酔っぱらい芸妓に違いない。
めぐりあうべき人にめぐりあわないで、めぐりあう必要がない人がついて廻る結果となる。
兵馬は唖然として言うべき言葉を失いました。