Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
Leggi 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 264.133 caratteri · 524 schermate
広い寺の境内は森閑として、静かなものになってしまいました。
ここに寝室へ帰って来た五人の亡者が、ハッと度胆を抜かれた出来事が一つありました。今、ここで雷のような鼾をかいて口をあいて寝ている雲水は、たしかにいま踏台になったはずの雲水なのであります。明晩は亡者となって迷い歩くべき権利の保留者であって、今晩は踏台となるべき義務者なのであります。たったいま踏台となった男が、自分たちより先廻りをして、もうここに鼾をかいて口をあいて寝ているということは、悪戯にしてもあまりに敏捷な悪戯でありました。ましてそれは悪戯ではなく、事実そこに今まで寝込んでいたものと見るよりほかはないのでありましたから、五人の亡者は面を見合せて、なんとなく気味の悪い思い入れであります。
この踏台がここに寝込んでいたのなら、今の踏台は何者であったろうと、彼等は言わず語らず、その踏台を訝りました。
「おい愚蔵、起きろ」
と言って揺り起すと、
「うーん」
と言って眼を醒ますと共に、
「あっ、失敗った!」
と言って刎起きました。自分が踏台となるべき義務を忘れて寝込んでしまった怠慢を、さすがに慚愧に堪えないものと見えて、その周章て方は尋常ではありませんでした。