Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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たろうぼう

太郎坊

幸田 露伴

Leggi 太郎坊 (たろうぼう) di 幸田 露伴 (こうだろはん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7863 caratteri · 16 schermate

Aozora Bunko

今の今まで太郎坊を手放さずおったのも思えば可笑しい、その猪口を落して摧いてそれから種々と昔時のことを繰返して考え出したのもいよいよ可笑しい。ハハハハ、氷を弄べば水を得るのみ、花の香は虚空に留まらぬと聞いていたが、ほんとにそうだ。ハハハハ。どれどれ飯にしようか、長話しをした。」

と語り了って、また高く笑った。今は全く顔付も冴えざえとした平生の主人であった。細君は笑いながら聞き了りて、一種の感に打たれたかのごとく首を傾けた。

「それほどまでに思っていらしったものが、一体まあどうして別れなければならない機会になったのでしょう、何かそれには深い仔細があったのでしょうが。」

とは思わず口頭に迸った質問で、もちろん細君が一方ならず同情を主人の身の上に寄せたからである。しかし主人はその質問には答えなかった。

「それを今更話したところで仕方がない。天下は広い、年月は際涯無い。しかし誰一人おれが今ここで談す話を虚言だとも真実だとも云い得る者があるものか、そうしてまたおれが苦しい思いをした事を善いとも悪いとも判断してくれるものが有るものか。ただ一人遺っていた太郎坊は二人の間の秘密をも悉しく知っていたが、それも今亡しくなってしまった。