Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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たぬきじる

完本 たぬき汁

佐藤 垢石

Leggi 完本 たぬき汁 (たぬきじる) di 佐藤 垢石 (さとうこうせき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 133.158 caratteri · 273 schermate

Aozora Bunko

それに、一中節の好きな大倉さんが来ておらぬのも不思議であった。

やがて杵屋連中の越後獅子が始まる。六葉奈の高島田が大分人の眼を惹いたようであった。

休憩時間がまた二十分ばかりある。廊下へ出ると人々が『呂昇がいる。呂昇がいる』と囁いていた。それを耳にしてふと前を見ると、直ぐ五、六歩離れた所に呂昇が、洋服を着けた背の高い五十格好の人と立話している。例の如く銀杏返しに結って、金縁眼鏡をかけ、羽織は黒縮緬の三つ紋で、お召の口綿を着ている。私は呂昇を素顔で見るのは初めてだ。なるほど老けている。四十の坂を余程越した、中婆だ。落ち付き払って衆人環視の中に男の人と何かの打ち合わせをしているらしかった。私は遠慮もなくジロジロとそのやや肥った姿を見ていると、階段を上がってきた芸妓の三人連れが呂昇を発見して、

『先日は……』と丁寧に頭を下げた。

『先日は』と呂昇も頭を下げて笑って見せたが、その表情は頗る拙いものだった。顔色も薄青い。それが白粉と口紅を塗って高座へ登り、血の滴れるような唇から豊かな、洗練された音声を溢れ出させて聴衆の頭を撫でてゆくことを考えると不思議のような心持ちがする。