Classici giapponesi con furigana
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ちいさきりょうしん
小さき良心
Leggi 小さき良心 (ちいさきりょうしん) di Kajii Motojirō (梶井 基次郎) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 5366 caratteri · 11 schermate
俺には何が善だか悪だかわからない。
わかっていなくとも通常の生活では胡麻化して来ることが出来たような気がする。しかし今夜こそ駄目だ。俺は怒りにまかせて人を撲った。それからそれへと平気ではいられないものが絶えず連続してゆく。しかも自分はわからない。それが苦しい。
一つの問題に悩んでいる自分の前に、問題が次々と山のように積まれてくる。そして自分はその内の一つも解き得ないでいる。それが苦しい。
鋭利な解剖刀のような普遍的法則が、それさえあればこの拷問的の荒縄を涙が出る程切りとばしてばらばらにしてやるのに。
ああ、それさえあれば。
思えば自分はそのエルサレムへ急ぐ巡礼だった。
ハハハ。おいその巡礼が酒をのみに行ったんだ。それから杖で人を撲ったんだ。たたなわる葡萄畠や古い町々を涙を流して過ぎるかわりに、巡査と睨みあいながらバビロンをほっつきまわってるんだ。それは外道の道だ。
馬鹿、悪魔。これは俺の巡礼だ。通らなきゃならなかった路だ。そして通って来た路だ。この路は聖地に通ずる。
しかし自分の声には力が枯れていた。
このいまわしい経験を裏返えしても自分を力付けるような温い運命の微笑がにおい出ることはなかろう。