Classici giapponesi con furigana
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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
Leggi 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) di 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 136.097 caratteri · 267 schermate
ある日などは病床で香織から頭髪を解いて貰ったこともございました。私の頭髪は大へんに沢山で、日頃母の自慢の種でございましたが、その頃はモー床に就き切りなので、見る影もなくもつれて居ました。香織は櫛で解かしながらも、『折角こうしてきれいにしてあげても、このままつくねて置くのが惜しい。』と言ってさんざんに泣きました。傍で見ていた母も、『モー一度治って、晴衣を着せて見たい……。』と言って、泣き伏して了いました。斯んな話をしていると、私の眼には今でもその場の光景が、まざまざと映ってまいります……。
いよいよ最う駄目と観念しました時に、私は自分が日頃一ばん大切にしていた一襲の小袖を、形見として香織にくれました。香織はそれを両手にささげ、『たとえお別れしても、いつまでもいつまでも姫さまの紀念に大切に保存いたします……。』と言いながら、声も惜まず泣き崩れました。が、私の心は、モーその時分には、思いの外に落付いて了って、現世に別れるのがそう悲しくもなく、黙って眼を瞑ると、却って死んだ良人の顔がスーッと眼前に現われて来るのでした。
兎に角こんなにまで深い因縁のあった女性でございますから、こちらの世界へ来ても矢張り私のことを忘れない筈でございます。