Classici giapponesi con furigana
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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
Leggi 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) di 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 136.097 caratteri · 267 schermate
紅い色の貝殻一つ、かすかにひびく松風一つが私にとりてどんなにも数多き思い出の種子だったでございましょう! それは丁度絵巻物を繰り拡げるように、物心ついた小娘時代から三十四歳で歿るまでの、私の生涯に起った事柄が細大漏れなく、ここで復習をさせられたのでした。
で、この海の修行場は私にとりて一の涙の棄て場所でもありました。最初四辺の景色が気に入ってはしゃいだのはホンの束の間、後はただ思い出しては泣き、更に思い出しては泣き、よくもあれで涙が涸れなかったと思われるほど泣いたのでございました。元来私は涙もろい女、今でも未だ泣く癖がとまりませぬが、しかしあの時ほど私がつづけざまに泣いたこともなかったように覚えて居ります。
が、思い出す丈思い出し、泣きたい丈泣きつくした時に、後には何ともいえぬしんみりと安らかな気分が私を見舞ってくれました。こんないくじのない者に幾分か心の落つきが出て来たように思われるのは、たしかにあの海の修行場で一生涯のお浚をしたお蔭であると存じます。私は今でもあれが私にとりて何より難有い修行場であったと感謝せずには居られませぬ。尚おここはただ昔の思い出の場所であったばかりでなく、現世時代に関係のあった方々との面会の場所でもあり、私は随分いろいろな人達とここでお逢いしました。