Classici giapponesi con furigana
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いけぶくろのみせ
山之口貘詩文集
山之口 貘
Leggi 山之口貘詩文集 (いけぶくろのみせ) di 山之口 貘 (やまのくちばく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 44.477 caratteri · 93 schermate
しかし、事業は興してみたものの、不漁つづきのために、家まで手放さなくてはならなくなったと母は云った。
やがて、ぼくらは、知人の家の離れを借りた。六畳ひとまに、母とぼくと弟と妹の四人の雑居は、そのまま、家の没落の実感となったのである。母は、なんどもなんども、物かげで涙を拭き拭きした。冬の休みが来て、中学二年の弟と、女学校一年の妹と、そして、ぼくと母とが、八重山へ行った。午後の四時頃、那覇の港を出ると、翌日の朝が宮古島で、その翌日の昼過ぎ頃は八重山なのである。八重山には港がなかった。船は沖に碇泊して、浜の方から石油発動機船が乗客を迎えにくるのである。浜へおりて、まっすぐの道を行くと、一丁程の左側には郵便局があって、その一寸先の突き当りには石垣に囲まれた島司の社宅がある。その右手の角が産業銀行の支店なのである。銀行とは一つ屋根で、裏手の半分が支店長の社宅にあてられていた。
ある日、素足の、ずんぐりした男が来て、なにごとか父と話していたが、父の差し出した半紙に印を押すと、拾円紙幣の束を受取ってその男は帰った。あれが、船頭さんだよと母はぼくにいった。そして、船頭さんに限らず、船の人達はあのようにして貸してやらなければ、むくれて他の業者へ鞍替えしてしまうのだと母は云った。