Classici giapponesi con furigana
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ふくいんさつじんじけん
復員殺人事件
Leggi 復員殺人事件 (ふくいんさつじんじけん) di Sakaguchi Ango (坂口 安吾) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 96.621 caratteri · 195 schermate
第二章 昭和十七年の出来事
そのとき、巨勢博士が、ニヤニヤと、だしぬけに私に話しかけた。
「どうでしょう、矢代先生。そのへんで一杯のんで、今夜はひとつ、箱根泊りとシャレませんか。残暑払いに快適でさア。僕が先生に弟子入りしたころは、先生は小田原住いで、時々箱根へお伴を仰せつかったものだったけど、あの味は忘れられないな」
まったく私は戦争の始まる前から小田原に住んでいたのである。サイカチ通りという所があって、私はその奥に住んでいたが、サイカチ通りの妙に閑静な家並というものは、眠ったような風趣があって、今も忘れることができない。
「よかろう。ひとつ、今夜は箱根へのそうや」
と、私も腰をあげたが、こういう偶然な発端によって、私まで、復員殺人事件の渦にまきこまれることになったのである。
第二章 昭和十七年の出来事
昭和十七年といえば、私はまだ小田原に住んでいた。そして、この事件の発端については、いくらか耳にしていた。とはいえ、当時は戦争熱のタケナワの頃のことで、土地の新聞もさしたる報道を行わず、巷説も、他殺、自殺、いゝ加減なものだった。私は今、巨勢博士や当事者から得た新しい材料によって、この発端の惨劇について詳細の報告をしておかなければならない。