Classici giapponesi con furigana
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ただなおきょうぎょうじょうき
忠直卿行状記
菊池 寛
Leggi 忠直卿行状記 (ただなおきょうぎょうじょうき) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 23.602 caratteri · 47 schermate
考えてみると、忠直卿は今日の華々しい勝利の中でも、どこまでが本当で、どこからが嘘だか分からなくなった。否、今日のみではない、生れて以来幾度も試みた遊戯や仕合で、自分が占めた数限りのない勝利や優越の中で、どれだけが本物でどれだけが嘘のものだか分からなくなった。そう考えると、彼は心の中を掻きむしられるような、激しい焦燥を感じた。彼とても、臣下のすべてから偽りの勝利を奪っているのではない。否、その中の多くの者には正当に勝っているのだ。それだのに右近や左太夫などの不埒者のいるために、自分の勝利が、すべて不純の色彩を帯びるに至ったのだと思うと、彼は今右近と左太夫とに対し、旺然たる憎悪を感じ始めたのである。
が、そればかりではなかった。こうなると、つい三月ばかり前に、大坂の戦場に立てた偉勲さえ、なんだか怪しげな正体の分からぬもののように、忠直卿の心の中に思われた。彼が、今まで誇りとしていた日本樊※(「口+會」、第3水準1-15-25)という称呼さえ、なんだか人をばかにしたような、誇張を伴うているようにさえ思われ出した。家臣どもから、いい加減に扱われていた自分は、お祖父様からも手軽に操られているのではないかと思うと、忠直卿の瞳には、初めて不覚の涙が滲み始めた。