Classici giapponesi con furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Leggi 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) di 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 143.735 caratteri · 290 schermate
黒い姿はすると、右手を上げて、それを紀久子のほうへ差し伸ばしながら横に振った。黙っていろということの合図らしかった。しかし、紀久子は叫ぼうとするその身構えから、姿勢をさえ崩すことができなかった。彼女の全身の神経は恐怖にわなわなと戦慄しながらも、針金のように固くなってしまっているのだった。
黒い姿は二つのベッドの中間に立ち止まって紀久子のほうへ向き直り、帽子を取った。そして、その顔を薄い電灯の光線に翳した。正勝だった。
紀久子は正勝の顔を見ると、打ちのめされたようにしてベッドの上にくずおれた。そして、彼女はもう叫ぶことも動くこともできなかった。ただ、心臓だけが電気仕掛けの機械のように、石像のように固くなった彼女の身体を微かに躍動させていた。
正勝は向き直って喜平のベッドに近寄り、夜具を引き捲って銀光のものを振り落とした。
「うっ! う……」
鈍重な唸り声を上げながら喜平は上半身を起こそうとしたが、正勝の掌の中の刃物はふたたび喜平の心臓を目がけて突き刺さった。
「うっ!」
喜平は鈍く短く唸って、ベッドの上に倒れた。
「あ!」
紀久子は初めて声を上げた。
正勝はすると、手を振りながら紀久子のベッドへ寄ってきた。