Classici giapponesi con furigana
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せんじょう
戦場
夢野 久作
Leggi 戦場 (せんじょう) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 25.769 caratteri · 51 schermate
一つには非常な寒さのせいであったろう。兵士の横腹から出る生温い血が手の甲にドクドクと流れかかると、その傷口から臓腑の中へ、グッと両手を突込みたい衝動に馳られて仕様がない位であった。
初めて見る負傷兵もモノスゴかった。
片手や片足の無い者はチットモ珍らしくなかった。臓腑を横腹にブラ下げたまま発狂してゲラゲラ笑っている砲兵。右の顳から左の顳※(「需+頁」、第3水準1-94-6)へ射抜かれて視神経を打切られたらしい、両眼をカッと見開いたまま生きていて「カアチャンカアチャン」と赤ん坊みたいな声で連呼している鬚だらけの歩兵曹長。下顎を削り飛ばされたまま眼をギョロギョロさして涙を流している輜重兵なぞ、われわれ外科医の智識から見ると、奇蹟としか思えない妖怪的な負傷兵の大群が、洪水のように戦線から逆流して来て、私の周囲に散らばり拡がって、めいめいそれぞれの苦痛を、隣同志、無関係にわめき立てる。又は歌を唄い、祈りを捧げ、故郷の親兄弟妻子と夢うつつに語り合う。ゴロゴロと咽喉を鳴らして息を引取る……伯林の酒場や、巴里の珈琲店や、倫敦の劇場と同じ地続きの平面上に在るとは思えない恐怖の世界……死人の世界よりもモット物すごい現実の悪夢世界……そんなものが在り得るならばあの時の光景がそうであったろう。