Classici giapponesi con furigana
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せんじりょこうかばん
戦時旅行鞄
海野 十三
Leggi 戦時旅行鞄 (せんじりょこうかばん) di 海野 十三 (うんのじゅうざ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.792 caratteri · 22 schermate
「でも力のある老人じゃなあ。あの大きいトランクを、軽々と担いでいくとは……」
金博士の姿は、こんどは埠頭に現れた。幸いに八千噸ばかりの濠洲汽船が今出帆しようとしていたところなので、博士はこれ幸いと、船員をつき突ばして、無理やりに乗船して、サロンの中へ陣取った。
「もしもし、どなたかしりませんが、もう船室がありませんので」
事務長がこわい顔をして博士のところへやって来た。
「船室? 船室はあるじゃないか。このとおり広い部屋があいているじゃないか」
「これはサロンでございまして、船室ではありません。御覧の通り、おやすみになるといたしましても、ベッドもありませんような次第です」
「いや、このソファの上に寝るから、心配しなさんな」
「それは困ります。では何とか船室を整理いたしまして、ベッドのある部屋を一つ作るでございましょう」
「何とでも勝手にしたまえ。わしは汽船に乗ったという名目さえつけばええのじゃ」
「え、名目と申しますと……」
「それは、こっちの話だ。ときにこの汽船は何時に○○港へ入る予定になっとるかね」
「はい、○○港入港は明後日の夕刻でございます」
「何じゃ明後日の夕刻? ずいぶん遅いじゃないか。