Classici giapponesi con furigana
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ゆびわ
指環
田中 貢太郎
Leggi 指環 (ゆびわ) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4002 caratteri · 9 schermate
隣の室ではまたものの気配がした。彼は怪しまれて騒がれないうちに、こっちから声をかけて事情を話して謝ろうと思った。
「もし、もし」
咽喉が乾からびて声の出ないのを無理に出して、体を起して坐った。
隣の室と境になった襖がすうと開いて、背の高い女が入って来た。
「私は決して怪しい者じゃありません、雨に降られたものですから、空家と思って入ったのです、何んとも申しわけがありません」
「何んとも思ってやしませんよ、もう、お眼がさめましたの」
「空家と思ったものですから、すっかり眠ってたのです、どうもすみません」
謙蔵は安心して女の方をはっきり見た。痩せぎすの体に友禅模様の長襦袢を着た、二十四五に見える廂髪の女であった。
「貸家札を貼って置いたから、空家と思ったのも無理はありません」
「どうもすみません」
「なに好いのですよ」
女はその前へ坐って白い顔を重そうにした。
「貴郎は福岡の方でしょう」
「福岡です、が、どうして知れます」
「お詞のぐあいで知れます」
「あ、そうですか」
「近いうちに、お帰りになるようなことはございませんか」
「爺が病気で、明日の汽車で帰ります」
「そう、明日の汽車で、では、すこしお願いしたい事がございますが、聞いて戴けませんでしょうか」