Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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くろかべ

文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁

泉 鏡花

Leggi 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁 (くろかべ) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 72.070 caratteri · 143 schermate

Aozora Bunko

状に視められた。

四辺は、ものの、ただ霧の朧である。

糸七は、そうした橋を渡った処に、うっかり恍惚と彳んだが、裙に近く流の音が沈んで聞こえる、その沈んだのが下から足を浮かすようで、余り静かなのが心細くなった。

あの稲塚がむくむくと動き出しはしないか、一つ一つ大きな笠を被た狸になって、やがては誘い合い、頷きかわし、寄合って手を繋ぎ、振向いて見返るのもあって、けたけたと笑出したらどうだろう。……それはまだ与し易い。宿縁に因って仏法を信じ、霊地を巡拝すると聞く、あの海豚の一群が野山の霧を泳いで順々に朦朧と列を整えて、ふかりふかりと浮いつ沈んつ音なく頭を進めるのに似て、稲塚の藁の形は一つ一つその頂いた幻の大な笠の趣がある。……

いや、串戯ではない、が、ふと、そんな事を思ったのも、余り夜ただ一色の底を、静に揺って動く流の音に漾わされて、心もうわの空になったのであろう……と。

何も体裁を言うには当らない、ぶちまけて言えば、馬鹿な、糸七は……狐狸とは言うまい――あたりを海洋に変えた霧に魅まれそうになったのであろう、そうらしい……

で幽谷の蘭の如く、一人で聞いていた、巻莨を、其処から引返しざまに流に棄てると、真紅な莟が消えるように、水までは届かず霧に吸われたのを確と見た。