Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 200.903 caratteri · 400 schermate
てよかろう。
けれど、今日までの史家が、史証だけを頼って推定した以上幾つかの時機において、彼が逆心を抱いたとなすのは、なお軽率をまぬがれない。
なぜならば光秀の心境にとっては最も重視されなければならない安土退去の五月十七日の夜から、坂本滞留中の五月二十六日までの十日間というものは、従来、全く史家にも閑却されているからである。
光秀の叛逆がまったくの暴挙で、長年にわたる計画の下に行われたものでないことは、前夜の事情と、作戦の踏襲によってこれだけは明確に断言してよい。
――とすれば、彼の胸に、魔が憑いたのは、まさに安土退去の後だ。そのときの衝動こそ、彼の一代の修養も理性も微塵となって去喪していたものにちがいない。――帰国途上の坂本の城に逗留十日という空間は――かくして光秀の心理にとっては、朝に夕に、一刻一刻に魔となっては人に回り、菩提となりまた羅刹となり、正邪ふた道の岐路に、右せんか左せんかと夜も日も懊悩しつづけていたものに間違いはないであろう。
いま、彼はその一日を、叡山へ登って行った。もちろんこの間といえ、彼の心は、寸時も一道に安まってはいなかった。