Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 190.406 caratteri · 381 schermate
信長に槍をつけられた敵の士は、それが信長とは恐らく知らなかったろう。
敵の二、三名を突き伏せて、信長はなおも、本陣の幕へ近く駈け寄っていた。
「楠のあたりぞッ」
信長は、味方の強者が、自分のそばを追い越して、驀しぐらに行く姿を見ると云った。
「駿河公方を逃すなッ。義元の床几は、彼処の楠の巨木を繞る幕のうちと覚ゆるぞッ」
地形から視て、彼は、何とはなくそう直感に云ったのである。将の床几をすえる場所というものは、その山相を観れば自然にわかるし、その場所は、一つ山に必ず一ヵ所しかないものだった。
「あッ、殿ッ」
乱軍の中の、ぶつかり合うばかりな出会い頭、誰か、彼の前に、血槍を伏せて、ひざまずいた味方がある。
「誰だッ」
「犬千代めにござります」
「おッ、於犬か。働けッ! 働けッ!」
夜のように、雨は暗く風は地を掃いて、泥水を降らした。
楠の枝や、松の小枝がひっ裂かれては、大地へ叩きつけられて来る。ザ、ザ、ザ、ザ……と義元の兜の上へ、こぼしたような梢の溜り水が落ちた。
「お館様ッ。彼処の内へ。――彼処の蔭へ」
旗本の山田新右衛門、近習の島田左京、沢田長門など、四、五名は義元の身を、八方楯のように囲んで、幕から次の幕へと、急を避けた。