Classici giapponesi con furigana
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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
Leggi 新潮記 (しんちょうき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 155.541 caratteri · 305 schermate
「御親切はかたじけないが」と兄のほうが答えた、「薬をのんだところで長い命ではない、からだはもう自分で捨てているのです、どうかお構いなくお立ち下さい、そして、多分こう申しても誤りはあるまいが……どうか王事のために身命を抛っておはたらき下さい」
「はあ、ではこれで」
大助は逃げるように小屋を出た。
「おーい早水さん」
呼んでみるが、声は口を出るなり烈風にもぎ去られてしまう。大助は精いっぱいの足で登っていった。汗ばむほどの小屋の暖かさにゆるんでいたからだは、ふたたびすさまじい寒気にうたれて骨の髄まで凍るようだった。風は脚下から吹きあげ、また急に右へ変り逆風になって捲き返す。粉雪は幕を張ったように前後左右を押し包んでまったく視界を奪っていた。
八合目の少し上に、村山口から登って来る道と合うところがある。秀之進はそこに待っていた。
「すっかり明けたようだね」
大助が追いつくと、かれはそういってすぐにまた登りつづけた。……胸を衝くような急斜面になり、巨きな巌が道へのしかかったり塞いだりしている。大助はひと足ごとに呻った。全身すっかり凍ったかと思う寒さなのに、肌を伝って汗の流れるのが感じられた。