Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いも

日本プロレタリア文学集・11 「文芸戦線」作家集(二)

佐左木 俊郎

Leggi 日本プロレタリア文学集・11 「文芸戦線」作家集(二) (いも) di 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 26.241 caratteri · 54 schermate

Aozora Bunko

「お房! お房! お房や!」

斯う呼びながら、其処へ、腰抜け同様になって長い間床に就いているお婆さんが、襤褸を曳摺って奥の部屋から這出して来た。

「お房や! 行く前に、俺にも一目顔を見せで行ってくれろ。俺は、再度と汝とは会われめえから……」

お婆さんはもう泣いていた。泣きながら、何か手にしていた襤褸で涙を拭った。

「可哀相に、遠くさやらねえで、森山の且那のどこさ、金をやる代りに、働きにやるってようなごと出来ねえのがえ? 東京だなんて、そんな遠くさ行って了ったら、俺は生きているうちに、再度と会われめえで……」

「婆さん! 丈夫になっていろな。五年や六年位は、直に経って了うもの。そのうちに、鶴だの亀らが大きくなったら、俺家もよくなんべから。」

お房はそう言いながら涙に咽せて来た。

「これは、お房や、汝が嫁に行くとき、半襟の一本もと思って蔵ってだのだけとも、俺は汝に再度と会うべと思われねえから、汽車の中で飴でも買って食ってくれろ。」

お婆さんは上り框まで這って来て、お房の腕に顔を押付けたりしながら、手にしていた襤褸をお房の手に握らせた。その中には幾らかの銅貨が包まれているらしかった。