Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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にちりん

日輪・春は馬車に乗って 他八篇

横光 利一

Leggi 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 86.787 caratteri · 177 schermate

Aozora Bunko

夜は更けた。彼女は椎の梢の上に、群った笹葉の上に、そうして、静な暗闇に垂れ下った藤蔓の隙々に、亡き卑狗の大兄の姿を見た。

卑狗の大兄の幻が彼女の眼から消えてゆくと、彼女は涙に濡れながら、再び燃え尽きる榾柮の上へ新らしく枯枝を盛り上げた。猿の群れは梢を下りて焚火の周囲に集ってきた。そうして、彼女が枯枝を火に差し燻べるごとに、彼らも彼女を真似て差し燻べた。

榾柮の次第に尽きかけた頃、山麓の闇の中から、突然に地を踏み鳴らす軍勢の響が聞えて来た。卑弥呼は傍の訶和郎を呼び起した。

「奴国の追手が近づいた、逃げよ。」

訶和郎は飛び起ると足で焚火を踏み消した。再び兵士たちの鯨波の声が張り上った。二人は馬に飛び乗ると、立木に突きあたりつつ小山の頂上へ馳け登った。すると、芒の原に掩われた小山の背面からは、一斉に枯木の林が動揺めきながら二人の方へ進んで来た。それは牡鹿の群だった。馬は散乱する鹿の中を突き破って馳け下った。と、原の裾から白茅を踏んで一団の兵士が現れた。彼らは一列に並んだまま、裾から二人の方へ締め上げる袋の紐のように進んで来た。訶和郎は再び鹿の後から頂上へ馳け戻った。