Classici giapponesi con furigana
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はるふかく
春深く
久保田 万太郎
Leggi 春深く (はるふかく) di 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3257 caratteri · 7 schermate
話はこれだけである。――その日の夕方、わたしは、そこを立って東京へかえった。
何だ、らちもない。――読者はおそらくそういうだろう。――わたしの思わせぶりな書出しにさそわれた読者はおそらくそういうだろう。――が、それに違いないものは仕方がない。
もし三、四年まえだったら、わたしは、ことのついでにこれを小説にしたことだろう。――小説にしないまでも、碓氷川の瀬の音の、更けて、いかに悲しくねざめの枕に響いたかということを、山鳥の尾のながながしく、掻口説いたことだろう。――残念なことに、そうしたたんねんさを、わたしはすでに失った。……
これを要するに、島崎先生と岡本さんの好みにあうところならと思ったのがそもそもの間違いだった。島崎先生なればこそ、岡本さんなればこそ、それぞれ折合えるものもみ出されたのである。――三十まえの、なま若い、料簡のきまらない、たじれ切ったわたしにはあたまで無理なところだった。――あまりに乾きすぎ、あまりに沈みすぎた――たとえば風の絶えた墓原のようにわたしには心細い場所だった。
ほんとうの一日一と晩。――時間にして二十四時間とわたしはそこにいなかった。