Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ますおとし

枡落し

山本 周五郎

Leggi 枡落し (ますおとし) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.765 caratteri · 67 schermate

Aozora Bunko

屋台の上の若者たちの、活気に溢れた顔が見えるようだ。そして、ちょっと裏へはいったここでは、悪い父親を持ったために、死のうと思いつめた娘がいる。珍らしいはなしではない、広い江戸の市中では、同じようなことが幾らも起こっているにちがいない。あたしも三十日ばかりまえなら、ことによるとおうめといっしょに死んだかもしれない。けれどもいまはもう死ぬ気はない、生きていられなくなったらわからないが、いまはもう死ぬのはいやだ、生きられる限り生きて、これまで苦労した分を取り戻すのだ、とおみきは思った。

――悪いことをしたのは、あんたでもおっ母さんでもないでしょ、とおみきは娘に云った。自分がしもしないことで、世間の眼なんかに恐れることはないじゃないの。

――おっ母さんはあの人たちの眼つきを知らないからよ。

あたしはあの人の女房ですよ、世間の者がどんな眼で見、どんなふうに耳こすりをするか、知らないとでも思ってるの、女房のあたしを見る眼が、娘のおまえを見るより棘がないとでもいうの、とおみきは思ったが、口には出さなかった。

――死のうと思えばいつでも死ねるわ、でもいったい死んでどうなるの、ごらんよ人殺しの女房と娘が、世間に顔向けがならなくなって死んだって、そこらの人たちの笑い話になるだけじゃないの。