Classici giapponesi con furigana
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かれぎくのかげ
枯菊の影
寺田 寅彦
Leggi 枯菊の影 (かれぎくのかげ) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6543 caratteri · 14 schermate
いったい自分は両親にとっては掛け替えのない独り子で、我儘にばかり育ったが、病気となると一層の我儘で手が付けられなかったそうである。薬でもなかなか大人しくのまぬ。これを飲んだらあれを買ってやるからと云ったような事で、枕元には玩具や絵本が堆くなっていた。少し快くなる頃はもう外へ遊びに出ようとする、それを引き止めるための玩具がまた増した。これが例になって、その後はなんでも少し金目のかかるような欲しい物は、病気の時にねだる事にした。病気を種に親をゆするような事を覚えたのはあの時だったと思うと、親の顔が今更になつかしい。二度目に罹った時は中学校を出て高等学校に移った明けの春であった。始めての他郷の空で、某病院の二階のゴワゴワする寝台に寝ながら窓の桜の朧月を見た時はさすがに心細いと思った。ちょうど二学期の試験のすぐ前であったが、忙しい中から同郷の友達等が入り代り見舞に来てくれ、みんな足しない身銭を切って菓子だの果物だのと持って来ては、医員に叱られるような大きな声で愉快な話をして慰めてくれた。あの時の事を今から考えてみると、あるいは自分の生涯の中で最も幸福な時だったかも知れぬと思う。