Classici giapponesi con furigana
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ねぎしあんをおとなうき
根岸庵を訪う記
寺田 寅彦
Leggi 根岸庵を訪う記 (ねぎしあんをおとなうき) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4911 caratteri · 10 schermate
交代の時間が来たからと云うて序にこの人にも尋ねてくれたがこれも知らぬ。この巡査の少々横柄顔が癪にさわったれども前のが親切に対しまた恭しく礼を述べて左へ曲った。何でも上根岸八十二番とか思うていたが家々の門札に気を付けて見て行くうち前田の邸と云うに行当ったので漱石師に聞いた事を思い出して裏へ廻ると小さな小路で角に鶯横町と札が打ってある。これを這入って黒板塀と竹藪の狭い間を二十間ばかり行くと左側に正岡常規とかなり新しい門札がある。黒い冠木門の両開き戸をあけるとすぐ玄関で案内を乞うと右脇にある台所で何かしていた老母らしきが出て来た。姓名を告げて漱石師より予て紹介のあった筈である事など述べた。玄関にある下駄が皆女物で子規のらしいのが見えぬのが先ず胸にこたえた。外出と云う事は夢の外ないであろう。枕上のしきを隔てて座を与えられた。初対面の挨拶もすんであたりを見廻した。四畳半と覚しき間の中央に床をのべて糸のように痩せ細った身体を横たえて時々咳が出ると枕上の白木の箱の蓋を取っては吐き込んでいる。蒼白くて頬の落ちた顔に力なけれど一片の烈火瞳底に燃えているように思われる。