Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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つちのなかからのはなし

桜の森の満開の下

坂口 安吾

Leggi 桜の森の満開の下 (つちのなかからのはなし) di Sakaguchi Ango (坂口 安吾) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 76.558 caratteri · 153 schermate

Aozora Bunko

閑山

昔、越後之国魚沼の僻地に、閑山寺の六袋和尚といって近隣に徳望高い老僧があった。

初冬の深更のこと、雪明りを愛ずるまま写経に時を忘れていると、窓外から毛の生えた手を差しのべて顔をなでるものがあった。和尚は朱筆に持ちかえて、その掌に花の字を書きつけ、あとは余念もなく再び写経に没頭した。

明方ちかく、窓外から、頻りに泣き叫ぶ声が起った。やがて先ほどの手を再び差しのべる者があり、声が言うには「和尚さま。誤って有徳の沙門を嬲り、お書きなさいました文字の重さに、帰る道が歩けませぬ。不愍と思い、文字を落して下さりませ」見れば一匹の狸であった。硯の水を筆にしめして、掌の文字を洗ってやると、雪上の蔭間を縫い、闇の奥へ消え去った。

翌晩、坊舎の窓を叩き、訪う声がした。雨戸を開けると、昨夜の狸が手に栂の小枝をたずさえ、それを室内へ投げ入れて、逃げ去った。

その後、夜毎に、季節の木草をたずさえて、窓を訪れる習いとなった。追々昵懇を重ねて心置きなく物を言う間柄となるうちに、独居の和尚の不便を案じて、なにくれと小用に立働くようになり、いつとなくその高風に感じ入って自ら小坊主に姿を変え、側近に仕えることとなった。