Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
五郎はその女の顔を見たことがない。障子のはめガラス越しに、紫色の袴を見ただけである。
「入る時はあんなに頼んでおきながら、おれにあいさつもなく転居した」
それが五郎には面白くなかった。信用出来ないという印象だけが、彼に残った。
〈信用出来ないのではなく、裏切られたという感じだったな〉
五郎は煙草を捨て、ぶらぶらと歩き出した。ここを見る意味はなくなっていた。
戦後小城は、進歩的な学者として、名前を挙げた。二、三年経って、彼にまとまった金を借りに来た。
「何に使うんだね?」
「家を建てたいんだ」
「まだあの人といっしょかね?」
「あの人って?」
「紫の袴をはいていた女さ」
「ああ」
小城はちょっと顔をあからめた。
「あれは今、ぼくの女房だ」
小城が家を建てるために、なぜおれが金を貸さねばならぬのかと、彼はいぶかった。
「金のことなら、お断りするよ」
五郎は言った。
「そんな金はない」
「そうかね」
小城は別にがっかりした風でもなかった。少壮学者らしく、顔は青白く、額にぶら下る髪を時々かき上げて、むしろ軒昂たる風情もあった。
私大の教授もしていたし、どこからか金はつくったのだろう。