Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
何処か人をひく不健康な美しさがあった。病気だということは前に天願氏に聞いていたけれど、天願氏の言葉を聞いたとたん、死に瀕した娘の寝顔が私の眼底に浮んで来た。
「夕御飯まだなんですね」
「夕御飯を持って来るかな?」と天願氏がむき直った。
「夕御飯は持って来ねばならん。が、娘が死にかかっているというのに、下宿人の夕御飯を作らねばならぬというのは哀しいな。持って来ないだろうな」
「皆、そこの部屋に集ってるんですか?」
「君が入って来る前に、おかみさんが娘の名をしきりに泣きながら呼んでいたから、意識が無くなったんだな。意識が無くなっても唸り声を出す事があるのかなあ」
「そりゃありますよ」私は、昨年死んだ父の臨終の事を思い出した。
「寝言みたいなものかな」
と天願氏が低い声で言った。そして何かを押えるような、努力するような表情をした。
暫くして私が聞いた。
「唸り声が聞えて来るときは矢張り厭でしたか?」
隣の部屋で一人の人間が生命を絶とうとしている。そのざわめきを感じながら細長い部屋の片すみに息をこらしてじっとしていた天願氏の心の姿勢に思い到ったとき、私は異様な寂寥を感じたのだ。