Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate

Aozora Bunko

「村上。飲め。もっと飲め」

彼の掌に掴まれて、私の肩はしびれるように痛かった。それに反抗するように肩を張り、私は更に新しい麦酒瓶に左の手を伸ばして居た――

丘を降りて、船着場の放水塔の下で洗濯をした。雲は無く暑かったけれども、風は絶えず東南の方向から吹いていた。洗濯物のかわきも早いだろうと思われた。放水塔の周囲には、兵隊が沢山集って洗濯をしていた。ほとんど、年多い兵隊ばかりであった。私の隣に洗濯していた兵が、もひとりの兵に話しかけるのを聞いた。

「ソ連が、参戦したそうじゃないか」

「うん」

それ切り黙ってしまった。話しかけられた兵隊は、何か不機嫌な顔をしていた。彼等の洗う石鹸の泡が、白くふくれてかたまったまま、私の前の水溝に流れて来た。

鹿児島の新聞社が焼けてからというものは、此の部隊に新聞は入って居ない筈であった。掌暗号長が兵たちに、ソ連参戦のことを外に洩らすなと訓示しているのを私は聞いたが、それにも拘らず何時の間にか拡がっているらしかった。怠業の気分が、部隊一般にかすかにただよっていた。どの点がそうだと指摘は出来ないが、腐臭のようにかぎわけられた。