Classici giapponesi con furigana
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えのきものがたり
榎物語
山本 周五郎
Leggi 榎物語 (えのきものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.519 caratteri · 67 schermate
ごく細く割った竹の棘で、右手の中指の第二節のふくらみに刺さり、爪で摘んだり歯で噛んだりしたため、そのふくらみが赤くなっていた。
毛抜きを持って来ましょう、と国吉が云った。いいえそんなことしないで、とさわが云った。ひとに知られたくないのだ、ひとに知れて笑われるのがいやなのだ、と国吉は思った。いいことがあるからためしてみましょう、触らないで待っていて下さい。国吉はそう云って走ってゆき、まもなく戻って来ると、なにかの草の葉を焙ったような、べっとりした物をさわの指の患部に貼り着けた。これで棘が抜けるかもしれません、村ではよくこうしていましたから、と国吉が云った。おまじないなの、とさわが訊いた。さあ、と国吉は口ごもり、いじらないでそっとしておくんですよ、と云ってたち去った。
それが二人の口をきいた初めであり、愛情の芽生えともなった。もちろんすぐにではない、人の眼が多いし国吉には暇がなかった。河見家の長女と下男とでは、側へ寄る機会も極めて稀にしかなかった。けれども、二人は遠くからいつも相手を見、お互いの噂を聞きのがすまいとしていた。――なかに縁談が始まり、足助じいさんが怒りだしてから、国吉の心はさわに対する同情と憐れみでいっぱいになった。