Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.073 caratteri · 223 schermate

Aozora Bunko

「もういちどはじめから云ってみろ」

「はじめからですって」

「訊き返すな、もういちどはじめから話せばいいんだ」と六郎兵衛はきめつけた。

おみやは繰り返した。六郎兵衛は盃を持ったまま、眼をつむって、殆んど無関心な態度でじっと妹の言葉を聞いていた。そうして、おみやの話しが終っても、そのまましばらくじっとしていたが、やがて「原田甲斐」と口の中で呟き、静かに眼をあけて、盃をさしだした。

「原田、――甲斐、……」と彼は、なにか固い物でも噛むように、一語ずつ、口の中で強く呟いた。おみやは兄の盃に酌をした。

「よし、もう帰れ」と六郎兵衛が云った、「念には及ばないだろうが、よく注意して気づかれないようにしろ、火急と思われることがあったら手紙で知らせるんだ」

「ええ、そうします」

「それから新八のことだが」と六郎兵衛は酒を呷った。

立とうとしたおみやは「新八のこと」と聞いて、どきっとしたようにまた坐った。

「これはまだはっきりしたことではないが、おれの聞いたところによると、隣りにいる女となにかあるようだぞ」

「お久米さんとですか」

「はっきりしたことじゃない」と六郎兵衛が云った、「このまえ、新八をしばらく外出止めにした、五十日ばかりだったろうが、そのあいだにこそこそ始めたらしい、それからあともときどき逢っているようだ」