Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.078 caratteri · 285 schermate
「失礼ではございますが」
「境論を山崎に預けたのは、山崎が涌谷さまの縁辺に当るからで、そのために山崎が窮地に立たされるだろうということは、涌谷さま自身も知っておられるのだ」
「涌谷さまがですか」
「手紙にもそう書いてあった」
「すると、――」舎人は甲斐を見あげた、「なにか御思案があるのでしょうか」
「江戸へゆくがいい」と甲斐は云った、「涌谷さまへは私が申し訳をする、ここからまっすぐに江戸へ出て、湯島の家へゆくがいい、私は来年の秋には出府するが、おまえのことは雁屋に頼んでやる」
「涌谷さまにどんな御思案があったとお思いですか」
「わからない」甲斐は片手を伸ばして空の火桶を撫で、それからにっと微笑した。すると唇のあいだから僅かに、白い歯が覗いた、「――いや、わかった、涌谷さまがおまえをよこしたのは、おまえを私に返したのだ」
舎人は眼を細めた。
「おまえのおちつく場所を私に任せるという意味で、おまえを使者に選んだのだ」
「私はそうは思えません」と舎人は云った、「それならそうと涌谷さまから話しがあった筈です」
「いや」と舎人は、甲斐がなにか云おうとするのを遮った、「私は山崎どのへ戻ります、私は私なりに、なにかお役に立つことがあると思いますから」