Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.078 caratteri · 285 schermate

Aozora Bunko

「片腕だって」

「右の腕がないようでした、左手は見えましたが、右の袖は前袴に鋏んだままでした、たしかに片腕だったと覚えています」

六郎兵衛は歯を剥きだし、まるで呪詛の呻きのように、歯と歯のあいだから呟いた、「石川兵庫介か」

「ご存じの男ですか」

「酒がない」と云って、六郎兵衛は盃をつきだした、「話しを続けろ」

それからおみやにさそわれて茶屋へゆき、おみやのほうで自分を知っていたこと、これからもときどき逢うという約束をされたこと、自分も嫌いではなかったので、幾たびか外で逢ったことなどを、玄四郎は語った。

――あのときだな。

六郎兵衛は思いだしていた。あのときだ、おみやが宿下りで来て、伊達家に若ぎみの袴着の祝いがあり、その機会に毒を盛る計画がすすめられている、ということを告げた。おみやのようすはすっかり変っており、それまでのじだらくさや、嬌めかしさはまったくみられず、兄である自分に対しても、はっきりと眼をあげてものを云った。

――また男ができたな、とおれは思った。

六郎兵衛はそのときの問答を、おぼろげながら思いだすことができた。あたしはこれまであなたの云うなりになって来た、けれども今日かぎり自分の望ましいように生きる、これからはもうあたしのことは当にしないでくれ、おみやはきっぱりとそう云いきった。