Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.078 caratteri · 285 schermate

Aozora Bunko

「そしてこのままお屋敷へ」

「いや」甲斐は首を振った、「むろんここへ戻って来る、喜兵衛が帰るまでは動けない、早く使いのほうを頼む」

おくみはいそぎ足で出ていった。

駕籠屋はこの台地の下、黒門町の近くにある。主人の政右衛門についてはまえに記したが、いまでも、甲斐に対する政右衛門の態度に変りはない。かつて男達として名を売り、命を投げ出して暴れまわったつらだましいは、四十歳を越したいまでもその風貌に残っている。それが甲斐の前に立つと、まるで奴僕がそのあるじに対するように、逞しい肩腰をちぢめ、この命ひとつただいまにでも差上げます、というような眼で見るのであった。そのときも、政右衛門は人足たちといっしょに来た。四枚肩の早駕籠は四人で担ぎ、肩替りが二人付く。継ぎ裃を着た甲斐は、刀を右手に持ってあらわれたが、政右衛門を見ると首を左右に振った。

「おまえは来なくともいい」

「いや」政右衛門は地面に裸の片膝を突いて答えた、「お供を致します」

「その必要はない、残れ」

「どう仰せられようとも、私はお供を致します」

世評を案じているのだな、と甲斐は思った。彼もまた世間の噂を聞いて、甲斐の身辺を危ういとみているのだろう。