Classici giapponesi con furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Leggi 次郎物語 (じろうものがたり) di 下村 湖人 (しもむらこじん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 178.724 caratteri · 355 schermate
」
「覚えています。」
五つの時、里子から帰って、まだちっとも家に落ちつかないでいた自分を、父が大川に水泳につれて行ってくれた時の喜びは、次郎にとって忘れようとしても忘れられない記憶だった。それは彼に、曲りなりにも、家庭に希望を抱かせた最初の機会だったのである。
(しかし、父は、なんで、だしぬけにそんなことを自分にたずねるのだろう。)
彼は、ふしぎそうに、もう一度父の顔を仰いだ。
「あれからもう十二三年にもなるだろうが、おまえといっしょに水を浴びたのは、あれ以来きょうがはじめてじゃないかね。」
なるほど考えてみるとはじめてである。次郎は、しかし、そんなことを言う父がいよいよふしぎでならなかった。
「実は、きょう、県庁の二階からおまえのしおれきった姿を見て、妙におまえのことが気になり、心配しながら帰って来ていたんだ。すると、水飼場の近くで、水に頭をつっこんで泳いでいる人がある。顔をあげたのを見るとおまえだ。私は、その時、どうしたのか、まるで忘れていた十二三年まえのことをふいと思い出してね。それで、つい私も飛びこんでみたくなったんだ。」
次郎は、しみじみとした父の愛情が全身にしみとおるのを感じた。