Classici giapponesi con furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Leggi 次郎物語 (じろうものがたり) di 下村 湖人 (しもむらこじん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 117.781 caratteri · 235 schermate
「ああ、父さんには、もう少し用がある。」
次郎は、しかし、動こうとしない。
「どうしたんだ、さっさとお帰り。」
「僕、父さんといっしょに帰るんです。」
「どうして?……用のないものは、さっさと帰る方がいいんだ。」
次郎は返事をしないで、じっとお内儀さんの方を見た。お内儀さんは、何か自分に解せないものを二人の対話の中に感じて、注意ぶかく二人を見くらべている。
「ぐずぐずしないで、さっさと帰るんだ。」
俊亮が叱るように言った。
「父さんも、もうここには用はないんでしょう。」
「あるんだ。あると言っているんじゃないか。」
「だって、それは、家で待ってたっていいような用じゃありませんか。」
俊亮は苦笑した。苦笑しながら、ちらっとお内儀さんの顔を見ると、お内儀さんはすごい眼をして次郎をねめつけていた。俊亮はすぐ真顔になって、
「そんなことをお前が言うものじゃない。お前は父さんが言うとおりに、だまって帰ればいいんだ。世の中は右でなけりゃ、すぐ左というものではないからな。……さあ、お帰り。」
次郎はぷいと立ち上り、お内儀さんには眼もくれないで、あらあらしく廊下に出て行った。
人気のない、いやな匂いのする土間をとおって外に出ると、道心をふみにじられた憤りと、けがらわしさの感じとが、焼きつくような日光の中で、急に奔騰するのを覚えた。