Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Leggi 次郎物語 (じろうものがたり) di 下村 湖人 (しもむらこじん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 117.781 caratteri · 235 schermate

Aozora Bunko

僕はまだ祖母をほんとうには愛しきれないようだ。以前のように、そう憎いとは思わないが、愛しているとは絶対にいえない。僕は、昨日、道行く人々の冷淡さに腹を立てたが、僕自身、祖母に対して冷淡でないといえるだろうか。それを思うと、僕はまだ十分に運命に打克ってはいないのだ。

夜、頭のはげた老人が父をたずねて来た。店の道具一切をそのまま譲りうけて、この家で酒屋を引きついで行く人がきまったということは、こないだ父にきかされていたが、この老人がその人だったのだ。ちょっと見るとやさしいようで、実はずるそうな人だった。

「お引越先がおきまりまでは、私の方はいつまでもお待ちします。」と言うかと思うと、「こちらの家主さんとも、じきじきお会いして、話はもう何もかもつけてありますので、へへへ。」と手をもみながら変な笑い方をした。春月亭のお内儀さんなんかより、こんな人の方がほんとうにいけない人なのかも知れない。それは、こんな人にはどこから「鑿」をあてていいのかわからないからだ。

この老人のような人間が、世の中にはかなり多いのではあるまいか。いや、どうかすると、たいていの人間がそうであるかも知れない。