Classici giapponesi con furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Leggi 次郎物語 (じろうものがたり) di 下村 湖人 (しもむらこじん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 200.443 caratteri · 398 schermate
すると、すぐ耳のうしろで、いきなり、中食を報ずる板木の音が鳴りひびいた。
食事は、まもなくはじまった。むろん、田沼、朝倉、小川の三先生も、塾長室で話をするいとまもなく、食卓に顔をならべたのだった。塾生たちは、田沼先生が塾に顔を出すのは珍しいことではなかったので、雪をおかしてやって来たのを、べつにあやしむふうもなく、ただ親しみをこめた眼で迎えただけだった。三先生の食事中の対話も、いつもとたいして変わりはなかった。すべては平日どおりだった。
次郎の気持ちは、しかし、はじめからおわりまで、緊張そのものだった。かれの眼はたえず田沼先生のほうに注がれ、その一挙一動をも見のがさなかった。先生は、肥満型で、血圧が高かったため、酒も煙草もたしなまなかったが、その代わりに、非常な健啖家で、速度もなみはずれてはやく、それがしばしば食卓の笑い話の種になるほどだった。今日も相変わらずだったが、先生は何杯目かのお代わりを朝倉夫人によそってもらいながら、とうとう自分から笑いだして言った。
「だしぬけに飛びこんで来て、こんなに食べても、だいじょうぶですかね。」
「ええ、ええ、ご安心なすって。